個人事業主の間は、生活費は自由に取ってOKです。
しかし、法人化とともに個人事業主⇒社長になります。
そうすると、今までと同じように自由に生活費を取るのではなく、役員報酬という一種の給料制となってきます。

では、その役員報酬はどのように決めればいいのでしょうか?

こちらを読んでいただければ、
1.役員報酬の仕組み
2.役員報酬の決め方
3.そもそも注意しなくてはいけないこと

が分かります。

1.役員報酬の仕組み

個人事業主時代は、お金があれば生活費は自由に取れました。
しかし、法人化すると役員報酬によって生活費を取っていくことになります。
それと同時に、大きな違いとして、個人事業主時代は生活費をいくら取っても経費にならなかったのが、法人の役員報酬は経費となります。

経費となるんですから、最大限の節税効果を狙って役員報酬を設定したい…
と皆さんが思います。

それでは税務署は困るので、役員報酬の決め方には制限をかけています。

細かく言うといくつかあるのですが、代表的なものとして覚えておくと良いのは、

・1年に1回
・期首から3か月以内に決めて
・それをその年度は続ける


というルールです。

1年に1回  

その通り、役員報酬は、1年に1回だけ変更(決定)が可能です。
他の従業員さんの様に多く働いたからといって、ベースアップなど変更はできません。

期首から3か月以内に決めて

その年1回の変更(決定)は、期首から3か月以内にしないといけません。

例えば、「4月から事業年度が開始する会社であれば、6月まで」「9月から事業年度が開始する会社であれば、11月まで」に変更(決定)をします。

それをその年度は続ける

そして、変更(決定)した役員報酬は、その年度内は基本的に同じ金額で経費計上し続ける必要があります。
例え、業績が芳しくなく、その金額が取れないとしてもです。
逆に、大きく予想を良い意味で裏切ってくれた場合でも、期末ボーナスなどは税務上の経費にできないので出すことは難しいです。

役員報酬はこういった仕組みとなっているため、きちんとしたシミュレーションを行ってから設定しなくてはいけません。

2.役員報酬の決め方

では、実際に役員報酬を決める基準は何なのでしょうか?
基本的には、この2つを考えればいいと思います。

①自分の生活費はいくら必要か?
②役員報酬をいくらにするのが節税面から見て得になるのか?

①自分の生活費はいくら必要か?

今までの生活費を考えて設定していく方法です。
特に、個人事業主から法人化をして社長になった方は、仮に今までの生活費が40万円だから役員報酬を40万円にすると失敗します。

役員報酬の40万円というのは、あくまでも額面金額です。
そこから社会保険料や所得税・住民税が控除されて手取りになってきます。

人によって控除される金額に違いはあるのですが、イメージとしては額面金額40万円で手取りとしては32万円くらいでしょう。
つまり、手取り40万円にしたいのであれば、50万円ほどの役員報酬を設定しなくてはいけません。

②役員報酬をいくらにするのが節税面から見て得になるのか?

もう1つの方法は、節税面を加味して考える設定方法です。

中小企業の法人税率はいくらでしょうか?
法人税は、利益にかかってくる税金ですが、実は利益額により税率が違います。

ざっくりですが、
利益400万円まで       …  21%
利益400万円超~800万円まで  …  23%
利益800万円超        …  33% となっています。

また、役員報酬を月額80万円に設定した時に個人にかかる税率(社会保険料含む)はいくらでしょうか?
社会保険料+所得税+住民税で27%です。
法人税率よりも低い税率になる可能性があるという事です。
※年齢や扶養などにより個人差はあるので一例です。

つまり、利益が800万円超出ているにも関わらず、役員報酬を月額40万円などにしている会社は、高い税率の法人税を多く支払っているということです。

中小企業においては、社長=株主である会社が多いです。
ですので、会社と社長のどちらかにキャッシュが残るような対策をする必要があります。

こういった視点を持って役員報酬を設定することも大切です。

3.そもそも注意しなくてはいけないこと

今まで役員報酬の決定方法について考えてきましたが、役員報酬には社会保険料がかかってくるため、会社としてはその社会保険料も負担となってきます。
また、手取りを確保するために額面を上げなければならないケースもあります。
そのために赤字になったとすれば本末転倒です。

そうなる可能性があるのであれば、個人事業主としてスタートすることも視野に入れるべきです。

個人事業主としてスタートをして、適切なシミュレーションをしながら最適なタイミングで法人化をする。
業種によっては法人化した時点で、年収800万を超えることも可能です。

この様に、役員報酬一つをとっても様々な視点から考えて決定をする必要があります。


土谷会計事務所では、個人事業主から法人まで幅広くお手伝いしております。
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